デモンズネームは、論理パズルと正体隠匿を融合させた国産ボードゲームです。
実はこのゲーム、楽しむだけでなく、認知機能の活性化やコミュニケーション能力の向上といった、リハビリテーションにおける多くの効果が期待できます。
この記事では、作業療法士の視点から見た「デモンズネームのリハビリ活用法」と、具体的な7つの効果をわかりやすく解説します。
デモンズネームとは
デモンズネームは、論理パズルと正体隠匿が融合した国産ボードゲームです。エクソシスト陣営と悪魔陣営が「悪魔の真名(4桁の数字)」を巡って推理と駆け引きを繰り広げます。
ここでは…
- ゲームの目的
- プレイ人数・時間
- 役割分担
- 情報の非対称性
- 推理フェーズ
- 会話とブラフ
- 勝敗の分岐
- 必要なもの
- ゲームの魅力と特徴
…について解説します。
ゲームの目的
『デモンズネーム』の目的は、エクソシスト陣営と悪魔陣営のいずれかが、自らの勝利条件を満たすことです。
エクソシスト陣営は、推理と協力を通じて「悪魔の真名(4桁の数字)」を当てることが目標です。
一方で悪魔陣営(悪魔+悪魔憑き)は、真名が当てられないように立ち回るか、逆転条件を達成することで勝利を狙います。
このように、勝利条件が非対称であることが、ゲーム全体の駆け引きに深みを加えています。
陣営ごとの明確な目的が、プレイヤーの行動選択に強く影響するのが魅力です。
プレイ人数・時間
本作は、5人から7人でプレイするのが最適とされています。
少人数だと情報戦が単純化し、多人数では混沌とした読み合いが楽しめます。
プレイ時間は1ゲームあたり40~60分ほどで、手軽ながらも濃密な体験が可能です。
時間配分がラウンド制で明確に設定されているため、ダレることなく進行できます。
論理推理と対人戦のバランスが、ちょうどよい長さに設計されています。
役割分担
ゲーム開始時に配られるカードによって、プレイヤーは「エクソシスト」「悪魔」「悪魔憑き」に分かれます。
各プレイヤーは自分の役職を秘密にしながら、ゲームに参加することになります。
悪魔は自身の真名(4桁数字)を決め、それを守るために悪魔憑きと協力します。
悪魔憑きはエクソシストを装いながら、誤情報や混乱を引き起こす役割を担います。
このような正体隠匿要素により、役職ごとの立場での立ち回りが非常に重要になります。
情報の非対称性
エクソシストはゲーム開始時、それぞれ真名のうち1桁の数字だけを知らされています。
この部分情報を元に、他のプレイヤーと協力して真名を導き出す必要があります。
一方で悪魔陣営は真名の全てを知っており、情報を隠蔽・撹乱する側に立ちます。
特に悪魔憑きが「知っているふり」をして発言することで、全体の推理に大きな影響を及ぼします。
この非対称な情報構造が、読み合いや信頼・疑念の醍醐味を生み出しています。
推理フェーズ
各プレイヤーは、ラウンドごとに「真名の予想(4桁の数字)」を紙に記入します。
その後、悪魔が「数字と桁が完全に一致している数」と「数字は合っているが桁が違う数」を発表します。
この仕組みは、いわゆるマスターマインド系の論理パズルに基づいています。
ただし、悪魔は悪魔憑きに対しては偽の判定をすることが許されており、情報の信頼性が揺らぎます。
そのため、論理だけでなく人間関係の見極めが重要となる奥深いフェーズです。
会話とブラフ
予想フェーズごとに設けられた6分間の会話時間では、全員が自由に発言できます。
ここでは、自分の知っている情報を出すか、はたまた隠すかの判断が問われます。
悪魔憑きはエクソシストを装って発言することで、推理を混乱させる役割を果たします。
プレイヤー間の信頼や疑念、発言のニュアンスがゲームの鍵を握ることになります。
論理だけでなく、言葉と心理の駆け引きが面白さを高めています。
勝敗の分岐
エクソシスト陣営は、制限回数内に悪魔の真名を当てれば勝利となります。
しかし、当てた後でも悪魔陣営には「どのエクソシストがどの桁を知っていたか」を当てる逆転のチャンスがあります。
この予想が成功すると、悪魔陣営が逆転勝利するというスリリングな展開が待っています。
制限回数を超えても真名が当てられなければ、悪魔陣営の勝利です。
このように、ゲーム終了直前まで勝敗がわからない構造が緊張感を高めています。
必要なもの
『デモンズネーム』は専用カード、紙とペンがあればプレイ可能です。
カードは役職やヒントなどを割り振るために用いられ、シンプルながら機能的です。
筆記用具は推理や情報整理に使うため、プレイヤーごとに用意が必要です。
特別な装備を必要としないため、ボードゲーム初心者でも手軽に始められます。
ルールの説明とセットアップも簡潔で、導入のしやすさが魅力のひとつです。
ゲームの魅力と特徴
『デモンズネーム』は、「論理パズル」と「正体隠匿」を組み合わせたユニークな作品です。
4桁の数字当てに加えて、会話やブラフ、信頼関係の構築が重要となります。
悪魔憑きの存在が常に疑念を生み、情報共有を複雑にします。
ロジカルな思考と、感情的な駆け引きの両方を楽しめるのが本作の大きな魅力です。
一度プレイすれば、その奥深さと中毒性の高さに惹きこまれることでしょう。


メカニクスについて
『デモンズネーム』は、複数のメカニクスが巧みに融合された知的かつ心理的な駆け引きを楽しめるボードゲームです。
ここではそのメカニクスとして…
- 正体隠匿
- 論理パズル(数字当て)
- 情報の非対称性
- ウソ情報とブラフ
- 会話・協議フェーズ
- 逆転要素
- 紙とペンを使った記録・推理
…について解説します。
正体隠匿
『デモンズネーム』では、プレイヤーは「エクソシスト」「悪魔」「悪魔憑き」のいずれかにランダムに割り振られます。
ゲーム開始時に役職カードが配られるまで、自分自身もどの役職になるのか分かりません。
この仕組みによって、プレイヤーは序盤から周囲の様子を伺いながら行動せざるを得なくなります。
特に「悪魔憑き」は、エクソシストのように振る舞って他者を混乱させることが求められます。
誰がどの陣営なのか分からない状況での推理と会話が、ゲームの緊張感を大いに高めています。
論理パズル(数字当て)
ゲームの中心的な仕組みは、悪魔が設定した「真名」と呼ばれる4桁の数字を当てる論理パズルです。
各ターン、プレイヤーは4桁の数字を紙に記入して予想し、その結果をもとに情報を得ていきます。
「数字と桁が一致しているもの」「数字は合っているが桁が違うもの」の数が判定され、ヒントとなります。
この形式は、いわゆるマスターマインドに近いロジックパズルであり、思考の積み重ねが重要です。
推理ゲームの要素と、情報戦の要素が融合している点がこのゲームの魅力といえます。
情報の非対称性
『デモンズネーム』では、エクソシストだけがゲーム開始時に「真名のうち1桁」だけを知っています。
この情報は他のプレイヤーと共有されず、それぞれがバラバラの断片を持ってスタートします。
一方で、悪魔と悪魔憑きは真名全体を把握しており、推理を妨害する立場にあります。
この非対称性により、誰がどの情報を持っているかを探る駆け引きが生まれます。
味方のふりをした敵の存在が、ゲームをより複雑で奥深いものにしています。
ウソ情報とブラフ
悪魔は、悪魔憑きが行った数字予想に対しては「嘘の判定」を返しても構わないという特権を持ちます。
これにより、エクソシスト陣営が推理に使う情報そのものが信用できないという状況が発生します。
悪魔憑きは意図的に間違った推理を行い、それを正当化するような会話をすることも可能です。
また、あえてエクソシストらしく振る舞いながら偽の証拠をちらつかせるといった戦術もあります。
情報の正確性が揺らぐことで、単純な論理だけでは解けない「人狼的な」ブラフ要素が加わっています。
会話・協議フェーズ
各ターンの後には、6分間の会話タイムが設けられており、プレイヤー同士が自由に話すことができます。
この時間を使って情報の共有や推理の議論、疑念の投げかけなどが行われます。
エクソシスト同士の協力が重要となる一方で、悪魔憑きが話をかく乱する可能性もあります。
誰が何を知っていて、なぜその情報を出すのかを見極める力が問われるフェーズです。
論理だけでなく、会話の巧みさや発言の信頼度が勝敗を左右する重要な時間となります。
逆転要素
エクソシスト陣営が真名を見事当てた場合でも、悪魔陣営に逆転のチャンスが残されています。
それは「どのエクソシストがどの桁を知っていたか」を正しく当てるという挑戦です。
この挑戦が成功すれば、たとえ真名が当てられていても悪魔陣営の勝利となります。
つまり、ゲーム終了まで気が抜けない展開が続くことになり、最後まで勝敗が読めません。
プレイヤーに常に集中力と戦略性を求める仕掛けが、この逆転要素に込められています。
紙とペンを使った記録・推理
『デモンズネーム』はアナログな記録手段を活用するゲームで、各プレイヤーが紙とペンを使います。
自分の予想、他プレイヤーの発言、悪魔の判定結果などを逐次記録していくことが求められます。
メモの取り方や情報整理の巧拙が、推理の精度に直結する設計となっています。
頭の中だけでは整理しきれない要素が多く、書き出すことで視覚的に全体を俯瞰できます。
論理力と同時に、記録力と分析力が求められる点がこのゲームの知的な奥行きを支えています。


期待されるリハビリ効果
『デモンズネーム』は、楽しみながら多面的なリハビリ効果が期待できるボードゲームです。
ここでは期待されるリハビリ効果として…
- 認知機能の向上
- 注意力・集中力の強化
- コミュニケーション能力の促進
- 記憶力のトレーニング
- 問題解決能力・柔軟な思考の育成
- ストレス耐性・感情コントロールの訓練
- 手指の運動・微細運動の促進
…について解説します。
認知機能の向上
『デモンズネーム』は、論理的思考や推理、情報整理などを活用するゲームであり、認知機能全般の活性化に効果的です。
とくに、仮説を立てて検証し、情報を組み合わせて推理するという一連の思考プロセスは、高次脳機能への刺激となります。
記憶、注意、遂行機能といった複数の認知領域が複合的に関与するため、総合的な認知リハビリに適しています。
数字を扱うため計算的思考も含まれ、脳内の論理回路を活発に動かすことができます。
そのため、軽度認知障害や高次脳機能障害のある方への作業療法にも応用が可能です。
注意力・集中力の強化
ゲーム中は他者の発言、ヒント、数字情報など、瞬時に変化する情報を見逃さずに捉える必要があります。
そのため、自分のターン以外でも集中を持続させることが求められ、注意持続力の訓練になります。
また、誰がどのような発言をしたか、どの数字を出したかを追う中で選択的注意のトレーニングにもなります。
周囲の情報に反応しつつ、自分の判断を保つというプロセスは、実生活にもつながる注意機能強化になります。
ゲームが楽しい体験であるため、自然に集中力を引き出しやすいのも利点です。
コミュニケーション能力の促進
本作は、会話や情報交換、時に説得や対話の駆け引きを必要とするため、対人コミュニケーションのリハビリに適しています。
発言のタイミングや表現の工夫、相手の言葉への理解など、実用的な社会的スキルの練習になります。
また、疑念や信頼を扱うやり取りを通して、他者との関係性の捉え方を再学習する機会にもなります。
失語症後や対人関係に不安のある方にとっても、ゲームという枠組みで安心してコミュニケーションをとれる環境が得られます。
作業療法の場面で、言語と非言語のやり取りの橋渡しとして活用することができます。
記憶力のトレーニング
『デモンズネーム』では、過去に出された数字の情報や他プレイヤーの行動を記憶する必要があります。
そのため、短期記憶やワーキングメモリ(作業記憶)を繰り返し使うことになります。
記憶した情報をもとに次の推理を組み立てることで、記憶と応用力の連携を養う訓練になります。
とくに、過去情報の引き出しと再評価を行う作業は、前頭前野の活性化に効果的です。
ゲームを楽しみながら記憶力の訓練ができる点が、従来のリハビリとは違う魅力でもあります。
問題解決能力・柔軟な思考の育成
ゲーム進行中は状況に応じて考え方や推理の方向性を変える柔軟性が求められます。
仮説が外れた場合にどのように修正するか、自分の考えを他者の意見と照らし合わせて再構築する必要があります。
こうした過程は、問題解決能力や課題遂行能力を高めるための優れた訓練となります。
また、他者の視点を取り入れることで、自己中心的な思考からの脱却も促されます。
変化に対応する力を育むリハビリ活動として、多面的なアプローチが可能です。
ストレス耐性・感情コントロールの訓練
本作には、疑心暗鬼や敗北、逆転劇といった感情を揺さぶる要素が多く含まれています。
プレイヤーは、自分の感情を抑えつつ、冷静な判断や振る舞いを維持することが求められます。
この過程は、ストレス下での行動制御や感情コントロールの訓練として機能します。
また、負けてもリベンジしたくなるようなゲーム構造が、感情の受け止め方を柔らかくします。
情動調整が必要な対象者にとって、実践的な心理リハビリの一手段となり得ます。
手指の運動・微細運動の促進
ゲーム中は紙とペンを使ってメモを取り、予想数字を記入するという動作が繰り返されます。
これらの作業は、手指の巧緻性や筆記動作の維持・回復に効果的です。
とくに軽度の片麻痺や手指の不器用さがある方に対して、無理なく反復的な練習が行えます。
「リハビリ」という意識を持たせずに、楽しみながら取り組める点が大きな魅力です。
作業療法における上肢・手指の微細運動訓練として活用することができます。

