STR-10:レガシーゲームは、プレイヤーの選択や行動がゲームに不可逆的な影響を与え、次回のプレイに引き継がれるメカニクスを特徴とします。
長期的な戦略性と物語の変化を楽しめるため、教育やリハビリなど多様な分野で応用が期待されます。
本記事ではこのメカニクスの概要や具体例、リハビリの臨床での応用について解説します。
原則
ゲームメカニクスの一つであるSTR-10:レガシーゲームの原則ですが…
- 長期的な影響
- 継続的なストーリーやキャンペーン
- プレイヤーの成長と進化
- 選択の重み
- リプレイ価値の高さ
- ゲーム世界の変化
…などがあげられます。
それぞれ解説します。
長期的な影響
レガシーゲームでは、プレイヤーの選択や行動が単なる一時的なものではなく、ゲームの進行全体に影響を与える仕組みが組み込まれています。
プレイヤーが行う決断や、ストーリー上の選択は、後のセッションで大きな意味を持つことになります。
例えば、特定のミッションで助けたNPCが次のゲームで重要な役割を果たすこともあれば、ある地域を破壊した結果、その地域がゲーム内で永久に利用できなくなることもあります。
このような仕組みにより、プレイヤーは慎重に選択を行う必要があり、ゲームの進行がダイナミックに変化します。
継続的なストーリーやキャンペーン
レガシーゲームは通常、単発のプレイではなく、複数のセッションにまたがるキャンペーン形式で進行します。
各セッションでの出来事や結果は次のセッションに引き継がれ、物語が展開されていきます。
このため、プレイヤーは前回のプレイで行った決断や行動を踏まえて、次回のプレイを計画する必要があります。
例えば、『パンデミック・レガシー』では、ある都市で感染症が拡大した場合、その都市が次回以降のゲームで封鎖されたり、影響を受けた状態のままとなるなど、ゲームの世界観が進化し続けるのです。
プレイヤーの成長と進化
レガシーゲームでは、プレイヤーキャラクターやゲーム内の環境が時間の経過とともに成長し、進化します。
キャラクターのスキルや能力が強化されることはもちろん、ゲームのルールそのものが変化することもあります。
例えば、『グルームヘイヴン』では、キャラクターが経験を積むことで新しいスキルを習得し、物語の進行によって町の発展や新たなエリアの開放が行われます。
この要素により、プレイヤーは単なる勝敗以上に、キャラクターの成長や世界の変化に没入することができます。
選択の重み
レガシーゲームでは、プレイヤーの選択がゲームの進行や結末に強い影響を与えるため、慎重な意思決定が求められます。
選択肢によっては、特定のキャラクターがゲームから永久に排除されたり、特定のストーリーが進行不能になることもあります。
これにより、プレイヤーは単なる戦略やゲームの勝敗だけでなく、物語の結末を左右する責任感を持つことになります。
たとえば、『リスク・レガシー』では、プレイヤーがある国を征服すると、その国のルールが変更され、二度と元の状態には戻らないため、選択の重みが非常に大きくなります。
リプレイ価値の高さ
一般的にレガシーゲームは、プレイヤーの選択によって異なる展開が生じるため、リプレイ価値が高いとされています。
一度プレイを終えた後でも、異なる選択を試すことで新しい展開を体験できることが特徴です。
ただし、従来のボードゲームのように無限に繰り返し遊ぶことは難しく、プレイヤーの選択によってゲームが完全に変化するため、リプレイ時の新鮮さは選択の分岐の多さに依存します。
そのため、『チャーターストーン』のように、プレイ終了後に通常のボードゲームとして遊べるよう設計されている作品も登場しています。
ゲーム世界の変化
レガシーゲームの特徴として、プレイヤーの行動によってゲーム世界そのものが変化する点が挙げられます。
例えば、マップ上の都市が消滅する、特定のエリアが封鎖される、新しいルールが追加されるなど、ゲームの舞台自体が動的に変化します。
この変化がプレイヤーにとって没入感を生み出し、単なる繰り返しプレイでは味わえない独自の体験を提供します。
『レガシー・オブ・ドラゴンホルト』では、プレイヤーの選択によって物語の進行が分岐し、異なる結末に導かれるため、まるでRPGのような深い物語体験が可能となります。


求められる能力
STR-10:レガシーゲームは、プレイヤーの選択がゲーム全体に長期的な影響を与えるため、一般的なボードゲームとは異なる能力が求められます。
主なものとしては…
- 戦略的思考能力
- リソース管理能力
- 問題解決能力
- 耐久性と忍耐力
- チームワークとコミュニケーション能力(マルチプレイヤー時)
- 適応性
…などがあげられます。
それぞれ解説します。
戦略的思考能力
レガシーゲームでは、プレイヤーの選択が単なる一時的な結果ではなく、ゲーム全体の進行や結末に大きな影響を及ぼします。
そのため、短期的な目標だけでなく、長期的な計画を立てながら戦略を組み立てる能力が必要です。
例えば、『パンデミック・レガシー』では、プレイヤーが特定の都市で感染症対策を強化するか、リソースを他のエリアに振り分けるかといった判断を行う必要があります。
ここで適切な選択をしなければ、次回以降のセッションで都市の崩壊や感染症の拡大といった深刻な影響が現れる可能性があります。
このように、ゲーム内でのリスクとリターンを見極め、最適な選択を行う戦略的思考が求められます。
リソース管理能力
レガシーゲームでは、限られたリソースをどのように活用するかがゲームの進行に大きく影響します。
キャラクターの成長や装備の選択、拠点の強化など、リソースを適切に分配することで、ゲームを有利に進めることができます。
例えば、『グルームヘイヴン』では、プレイヤーは手持ちのアイテムやスキルカードを適切に管理し、次の戦闘やミッションに備える必要があります。
資源を無計画に消費すると、次のセッションで不利な状況に陥る可能性があるため、慎重なリソース管理が求められます。
このように、限られた資源を効率的に活用し、長期的な成功を目指す能力が重要です。
問題解決能力
レガシーゲームでは、プレイヤーが直面する問題や課題に対して、柔軟に解決策を見つける能力が求められます。
ゲーム内では、予期しないイベントや新たなルールの追加などによって状況が急変することがあります。
そのため、プレイヤーは冷静に状況を分析し、最適な選択を行う必要があります。
例えば、『シーフォール』では、プレイヤーが海賊として冒険を進める中で、予期せぬ障害や新たな発見が発生し、それに応じた選択を迫られます。
適切な問題解決を行うことで、ゲームの展開を有利に進めることができるため、この能力が特に重要となります。
耐久性と忍耐力
レガシーゲームは、通常のボードゲームと異なり、1回のプレイで完結するのではなく、複数のセッションにわたって進行します。
時には、思い通りにゲームを進められないことや、長期間の取り組みが求められることもあります。
そのため、プレイヤーには耐久性と忍耐力が必要です。
特に、ゲームの進行が思わぬ方向へ向かうこともあり、失敗から学び、次のセッションでより良い選択をすることが重要となります。
例えば、『リスク・レガシー』では、ゲームの途中で不利な状況に陥ったとしても、次のセッションで巻き返しを図ることが可能です。
長期的なプレイに耐え、失敗を受け入れながら学習し続ける能力が求められます。
チームワークとコミュニケーション能力(マルチプレイヤー時)
マルチプレイヤー形式のレガシーゲームでは、プレイヤー同士が協力して目標を達成する場面が多くあります。
そのため、他のプレイヤーと円滑にコミュニケーションを取り、チームとしての戦略を考える能力が求められます。
例えば、『パンデミック・レガシー』では、プレイヤー同士が情報を共有し、役割分担を決めながら感染症の拡大を防ぐ必要があります。
ここで、協力がうまくいかないと、ゲームの進行が困難になってしまうため、チームワークを発揮することが重要です。
協力型のレガシーゲームでは、他のプレイヤーと意見を調整し、戦略を立てながら進めることが求められます。
適応性
レガシーゲームでは、プレイヤーの選択やゲームの進行によってルールや環境が大きく変化することがあります。
そのため、状況に応じて戦略や戦術を柔軟に変更する能力が必要です。
例えば、『ビトレイヤル・レガシー』では、プレイヤーの行動によって物語が分岐し、異なるルールや制約が追加されることがあります。
このような変化に対応し、最適な行動を取るためには、高い適応力が求められます。
プレイヤーが固定観念にとらわれず、新たな状況に柔軟に対応できることが、ゲームを成功に導く鍵となります。


具体例(カードゲーム)
レガシーゲームの概念はボードゲームだけでなく、カードゲームにも適用されています。
これらのゲームでは、プレイヤーの選択がデッキ構築やカードの追加・削除に影響を与え、ゲームの進行に長期的な変化をもたらします。
ここでは…
- Android: Netrunner – Terminal Directive
- Aeon’s End: Legacy
- Wildtails: A Pirate Legacy
…について解説します。
Android: Netrunner – Terminal Directive
『Android: Netrunner』は、サイバーパンクをテーマとした2人用の対戦型カードゲームで、プレイヤーは巨大企業(コーポレーション)またはハッカー(ランナー)として戦います。
このゲームのエクスパンションである『Terminal Directive』は、レガシー要素を導入したキャンペーンモードが特徴です。
プレイヤーの選択によって、デッキの構築が変化し、ストーリーの展開が変わる仕組みになっています。
『Terminal Directive』では、プレイヤーの選択によって新しいカードが追加されたり、特定のカードが削除されたりします。
例えば、企業側が特定の研究を進めると、その成果に関連する新しいカードがデッキに加わる一方で、失敗するとペナルティが課せられる場合もあります。
ゲームの進行に伴い、新しいルールが解禁されたり、ストーリーの進行によってカードが進化するなど、プレイヤーの選択が長期的な影響を与えます。
このため、単なるデッキ構築ゲームにとどまらず、プレイヤーがゲームの世界観に没入しやすい仕組みが構築されています。
Aeon’s End: Legacy
『Aeon’s End』は、協力型のデッキ構築ゲームで、プレイヤーは魔法使いとして邪悪な怪物(ネメシス)から街を守ることが目的となります。
『Aeon’s End: Legacy』は、このゲームにレガシー要素を取り入れたバージョンであり、プレイヤーの選択がストーリーの進行やカードの成長に影響を与える仕組みになっています。
本作では、プレイヤーの選択によってカードの強化や新しいカードの追加が行われます。
例えば、プレイヤーが戦闘中に選んだ戦術や使用した魔法の種類によって、次回のプレイ時に利用できるカードが変化します。
特定の条件を満たすと、新しいキャラクタークラスや呪文が解禁されることもあり、プレイヤーは物語の展開に応じてデッキを進化させていきます。
さらに、ゲームの進行に伴い、敵の行動パターンやルールが変化するため、戦略の調整が必要となります。
これにより、ゲームプレイがダイナミックになり、プレイヤーは物語と共に成長していく感覚を味わうことができます。
Wildtails: A Pirate Legacy
『Wildtails: A Pirate Legacy』は、18枚のカードとステッカーを使用したシンプルなレガシーカードゲームです。
プレイヤーは海賊として大海原を冒険し、選択によってストーリーが変化しながら進んでいきます。
他のレガシーゲームと比べるとコンパクトな設計ですが、少ないコンポーネントの中にしっかりとしたレガシー要素が組み込まれています。
本作の最大の特徴は、ステッカーを使用してカードを強化し、ゲームの進行に応じて新しい要素が追加される点です。
例えば、プレイヤーがある海賊団と同盟を結ぶと、その結果が記録され、次のプレイ時にその海賊団が助けに来てくれることがあります。
逆に、敵対関係になった場合は、その海賊団が妨害してくることもあります。
このように、プレイヤーの選択が次回以降のプレイに直接影響を及ぼし、物語がプレイヤーごとに異なる展開を見せるのが特徴です。
また、シンプルながらも選択の影響が大きく、何度もプレイしたくなる要素が備わっています。


具体例(ボードゲーム)
レガシーゲームは、プレイヤーの選択や行動がゲームの進行やルール、コンポーネントに長期的な影響を与えることを特徴とするゲームデザインです。
一般的なボードゲームと異なり、一度変更されたルールや要素は元に戻せず、プレイするたびにゲームが進化していきます。
ここでは、代表的なボードゲームのレガシーゲームとして…
- パンデミック: レガシー
- チャーターストーン ~王の勅許と六人の村人~
- マイシティ
…について解説します。
パンデミック: レガシー
『パンデミック: レガシー』は、病原体の感染拡大を防ぎながら治療薬を開発し、世界を救うことを目的とした協力型ボードゲーム『パンデミック』のレガシーバージョンです。
ゲームは12か月間(12回のプレイ)を通じて展開され、各プレイの結果が次回のプレイに影響を与えます。
ストーリー要素が強く、プレイヤーが選択する行動によってゲームの展開が変化します。
『パンデミック: レガシー』では、プレイヤーの選択が都市の状況やゲームのルールに直接影響を与えます。
例えば、特定の都市で感染が拡大しすぎると、その都市が封鎖されたり、特定のキャラクターが永久にゲームから除外されることもあります。
また、特定の条件を満たすと、新しいルールが記された極秘カードが開封され、ゲームの内容が変化していきます。
これにより、プレイヤーは毎回異なる体験をしながらゲームを進めることができ、ストーリーの没入感が高まります。
チャーターストーン ~王の勅許と六人の村人~
『チャーターストーン』は、プレイヤーが王の勅許を受け、村を発展させていくボードゲームです。
ゲームは全12回のプレイを通じて進行し、各プレイヤーが選んだ行動によって街の様子が変化していきます。
最終的に、プレイヤーが作り上げた街が独自のボードゲームとして機能するようになります。
『チャーターストーン』では、プレイヤーの選択がゲームのボードやルールに影響を与えます。
例えば、新しい建物を建てると、その建物の能力がゲームに追加され、今後のプレイで利用可能になります。
また、特定の条件を満たすと封印されたコンテンツが開放され、新しいルールや要素が追加されます。
12回のプレイを終えた後も、完成した街を使って通常のボードゲームとして遊ぶことができる点が特徴的です。
このため、単なる一時的なゲーム体験ではなく、プレイヤー自身がゲームの発展に関与することができます。
マイシティ
『マイシティ』は、各プレイヤーが個別のボードを持ち、それぞれの街を発展させていくタイル配置型のレガシーボードゲームです。
ゲームは8つのエピソードで構成され、それぞれのエピソードごとに新しい要素が追加されます。
各プレイヤーの街の発展状況が異なるため、ゲームごとに個性的な街が生まれます。
『マイシティ』では、各エピソードごとに新しいルールやカードが追加され、ゲームの内容が変化していきます。
例えば、最初のエピソードでは基本的な建設ルールだけですが、次第に工業化や人口増加といった新たな要素が導入され、街の成長がよりダイナミックになります。
プレイヤーの選択によって、街の構造や発展の方向性が異なり、最終的には全く異なる都市が出来上がります。
このため、ゲームを進めるごとに新たなチャレンジが生まれ、プレイヤーの創造力が試される要素が強調されています。


具体例(デジタルゲーム)
デジタルゲームにおけるレガシーゲームは、プレイヤーの選択や行動がゲーム全体に長期的な影響を与えることを特徴としています。
ボードゲームのレガシーゲームほど明確に定義されているわけではありませんが、プレイヤーの決断がストーリーやゲーム世界の変化に影響を与える作品が多く存在します。
以下に、代表的なデジタルゲームのレガシーゲームとして…
- ホグワーツ・レガシー
- The Last of Us Part II
- Mass Effectシリーズ
…について解説します。
ホグワーツ・レガシー
『ホグワーツ・レガシー』は、ハリー・ポッターシリーズの世界観を基にしたオープンワールド・アクションRPGであり、1800年代の魔法界を舞台としています。
プレイヤーは魔法学校ホグワーツの生徒として、魔法を学びながら様々な選択を行い、物語を進めていきます。
プレイヤーの行動がストーリーやキャラクターの成長に影響を与えるため、選択次第で異なる展開を体験することが可能です。
本作では、プレイヤーの選択によってキャラクターの成長や物語の展開が変化します。
例えば、魔法の習得方法や対人関係において選択が影響し、善良な魔法使いとして成長するか、禁じられた呪文を使うダークウィザードになるかが決まります。
ただし、ゲーム全体が一つのキャンペーンを通じて進行するボードゲームのレガシーゲームとは異なり、プレイヤーの選択が個々のプレイセッションに影響を与える形となっています。
そのため、デジタルゲームにおけるレガシー要素は限定的ですが、ストーリー分岐やキャラクターの成長に強い影響を持つ点が特徴です。
The Last of Us Part II
『The Last of Us Part II』は、ポストアポカリプスの世界を舞台としたアクションアドベンチャーゲームで、主人公エリーの旅を中心にストーリーが展開されます。
本作では、プレイヤーの選択や行動がストーリーの流れやキャラクターの関係性に影響を与える仕組みが導入されており、プレイヤーの意思決定によって異なる展開が生じます。
本作では、プレイヤーの選択によってエリーと他のキャラクターとの関係が変化し、特定のイベントや結末に影響を与えます。
例えば、特定のキャラクターを助けるか否か、復讐を遂げるか許すかといった選択が、物語の進行に直接影響を与えます。
ただし、ゲーム全体は一つの物語として完結するため、プレイヤーの決断が次回のプレイに影響を残すようなボードゲームのレガシー要素とは異なります。
そのため、デジタルゲームにおけるレガシーゲームの概念を厳密に適用するのは難しいですが、プレイヤーの意思決定によってストーリーが変化する点はレガシー的な要素として捉えられます。
Mass Effectシリーズ
『Mass Effect』は、銀河規模の戦争と宇宙探査をテーマにしたSFアクションRPGシリーズであり、プレイヤーは主人公シェパード司令官として、銀河の命運をかけた決断を下していきます。
シリーズ全体にわたるストーリーの連続性が強く、プレイヤーの選択が次回作に引き継がれる仕組みが特徴的です。
本シリーズの最大の特徴は、プレイヤーの選択が次回作に影響を与える点にあります。
例えば、1作目で下した決断が2作目や3作目に反映され、登場するキャラクターの生死やストーリー展開が変化します。
プレイヤーが選択した対立勢力との関係や、どの種族を味方につけたかによって、最終的な物語の結末が大きく変わることもあります。
このように、1つのプレイセッションの選択がシリーズ全体に影響を与える点において、『Mass Effect』シリーズはデジタルゲームにおける最も明確なレガシーゲームの一例と言えます。


理論的背景
レガシーゲームは、プレイヤーの選択や行動がゲームに長期的な影響を与えることを特徴とし、システム論や物語論などの理論的枠組みに支えられています。
以下に、レガシーゲームのメカニクスに関連する理論的背景として…
- ゲーム理論とシステム論
- マジックサークルと社会的合法性
- 不可逆性と永久的な変化
- 物語と反省の統合
…について解説します。
ゲーム理論とシステム論
ゲーム理論とシステム論は、ゲームを一つのシステムとして捉え、プレイヤーの選択がゲーム状態を変化させることを強調します。
レガシーゲームでは、このシステム論に基づき、プレイヤーの選択がゲームに長期的な影響を与えることがデザインされています。
Crawford (1984) は、ゲームがシステムとして機能するためには、プレイヤーの選択が明確なフィードバックを持つ必要があると述べています。
また、TychsenとHitchens (2009) は、ゲームのシステム性とプレイヤーの選択がゲームの状態を変化させることを強調しました。
レガシーゲームはこの考え方を発展させ、プレイヤーの決定がゲームボードやルール、ストーリーに影響を与え、不可逆的に変化する仕組みを持っています。
これにより、ゲームは単なる勝敗を競うものではなく、プレイヤー自身がシステムを構築する体験へと進化しています。
マジックサークルと社会的合法性
「マジックサークル」とは、ゲームが現実世界とは異なる独自の領域を形成するという概念で、プレイヤーはゲームのルールや設定に従って行動します。
レガシーゲームでは、このマジックサークル内でプレイヤーの選択が現実的な影響を持つように設計されています。
Thomas Malaby (2007) は、ゲームを「社会的に合法な、人為的に作られた偶然性を生み出す半境界のドメイン」と定義しました。
これは、ゲーム内での選択がゲームの外でも意味を持つ場合があることを示唆しています。
レガシーゲームでは、プレイヤーの決定が物理的なゲームボードに記録されることで、後のプレイに影響を与えます。
この設計は、プレイヤーが単なるルールの下で競争するのではなく、世界の構築者として関与することを促し、より深い没入感を生み出します。
不可逆性と永久的な変化
レガシーゲームの最大の特徴は、プレイヤーの選択が不可逆的であり、ゲームに永久的な影響を与えることです。
通常のボードゲームでは、プレイが終わればゲームの状態はリセットされますが、レガシーゲームではプレイヤーの決断が残り続けるため、選択の重みが増します。
このメカニクスは、Rob Daviauによって開発されたLEGACYシステムに基づいています。
『Risk Legacy』や『Pandemic Legacy』では、プレイヤーが特定のイベントをトリガーすると、ゲームボードが変更される、ルールが追加される、カードが破棄されるなどの変化が発生します。
この不可逆性は、プレイヤーに選択の責任を強く意識させ、より戦略的な思考を促します。
また、ゲーム体験が一度限りのものとなることで、プレイヤーはより没入感のある体験を得ることができます。
物語と反省の統合
レガシーゲームでは、プレイヤーの選択が物語に影響を与えることで、ゲームをより身近に感じさせることができます。
単にスコアを競うだけでなく、プレイヤー自身の決断がゲーム世界の運命を左右するため、より強い関与感を生み出します。
物語と反省の統合は、プレイヤーがゲームを通じて自己の選択を振り返り、より深い意味を見出すことを促します。
例えば、『Pandemic Legacy』では、プレイヤーの行動によって世界の状況が変化し、選択の結果が後の展開に影響を与えます。
このようなゲーム設計は、プレイヤーが過去の決断を思い返しながら次の行動を考えることを促し、ゲームを単なる娯楽ではなく、意味のある体験へと昇華させます。


応用分野
レガシーゲームのメカニクスは、プレイヤーの選択や行動が長期的に影響を与える仕組みを持つため、さまざまな分野で応用できます。
特に、教育やビジネス、健康、環境保護といった分野では、プレイヤーが自己の決定の影響を意識しながら学習・行動できるため、持続的な成長や変化を促すツールとして有用です。
ここでは応用分野として…
- 教育とトレーニング
- ビジネスとマーケティング
- 健康とウェルネス
- 環境保護と持続可能性
…について解説します。
教育とトレーニング
レガシーゲームのメカニクスは、教育やトレーニングの分野において、学習者が長期的な影響を意識しながら意思決定を行う経験を提供します。
プレイヤーの選択が未来の学習環境や結果に影響を与えることで、単なる情報のインプットではなく、経験を通じた深い学習を促すことができます。
応用例としてですが、シミュレーションゲームを活用することで、学生が社会や経済、環境などの複雑なシステムを学ぶ機会を提供できます。
例えば、経営シミュレーションゲームでは、プレイヤーが企業のCEOとして決定を下し、それが長期的なビジネス戦略に影響を与える形で学習が進行します。
また、医療教育においても、患者の治療方針を選択し、その結果が次のケースに影響を与えるシナリオを通じて、診断力や意思決定力を養うことができます。
ビジネスとマーケティング
レガシーゲームのメカニクスをビジネスに応用することで、従業員のモチベーションを高めたり、顧客との長期的な関係を築くことができます。
特に、ゲーミフィケーションを活用したトレーニングプログラムやロイヤリティプログラムにおいて、継続的な成果を促進する仕組みを構築できます。
企業内トレーニングでは、プレイヤーの選択が実際の業務スキルや昇進に影響を与える形式のシミュレーションを導入することで、従業員の積極的な学習を促せます。
また、顧客向けのロイヤリティプログラムでは、一定のアクションを積み重ねることで特典が得られる仕組みを設けることで、ブランドへの忠誠心を高めることが可能です。
例えば、ある決断をした顧客に対して、次回以降の購買体験が変化するようなマーケティング手法を取り入れることで、長期的な顧客エンゲージメントを生み出すことができます。
健康とウェルネス
健康管理やウェルネスの分野では、レガシーゲームのメカニクスを活用して、個人が健康的な習慣を長期間継続できるよう支援することができます。
プレイヤーの選択が自身の健康状態やフィットネスの進捗に影響を与える仕組みを構築することで、行動変容を促進します。
フィットネスアプリでは、毎日の運動や食生活の記録が未来のプログラムや成果に影響を与える形式を採用することで、ユーザーのモチベーションを維持できます。
例えば、プレイヤーが選択したトレーニング方法や生活習慣が、アプリ内での成長や報酬に影響し、持続的な行動変化を生み出します。
健康管理の面では、糖尿病管理アプリなどが患者のデータを蓄積し、長期的な健康リスクを予測する仕組みとして活用されています。
環境保護と持続可能性
レガシーゲームのメカニクスを環境保護の分野に適用することで、プレイヤーが長期的な環境への影響を考慮し、持続可能な行動を取るよう促すことができます。
ゲームを通じて、個人の選択が地球環境に与える影響を学ぶ機会を提供できます。
環境シミュレーションゲームでは、プレイヤーが都市の開発やエネルギー政策を選択し、その結果がゲーム世界に反映される形で環境問題を学ぶことができます。
例えば、『SimCity』のような都市運営ゲームでは、再生可能エネルギーを選択することで大気汚染を減らし、長期的に持続可能な都市を発展させることができます。
また、個人の消費行動をゲーム化することで、持続可能な選択を促すアプリも開発されており、プレイヤーが実生活でも環境に配慮した行動を取るよう導くことが可能です。


脳の部位
レガシーゲームでは、プレイヤーの選択が長期的に影響を与えるため、複雑な意思決定や問題解決、記憶の活用、視覚的な情報処理などが求められます。
これに伴い、特定の脳領域が活性化し、認知機能の向上や戦略的思考の促進に寄与する可能性があります。
以下に、レガシーゲームのメカニクスによって活性化が期待される脳の部位として…
- 視覚皮質と視覚関連領域
- 前頭葉(特に前頭前皮質)
- 前帯状皮質(ACC)と側頭葉
- 基底核と黒質
- 小脳
…があげられます。
それぞれ解説します。
視覚皮質と視覚関連領域
レガシーゲームでは、プレイヤーがゲーム内の変化を視覚的に認識し、それをもとに次の行動を計画する必要があります。
視覚情報は、状況の把握や戦略の構築に不可欠であり、これにより視覚皮質や視覚関連領域が活性化されます。
視覚皮質(後頭葉)は、ゲーム画面の変化や新しい情報を素早く処理し、重要な要素を抽出する役割を担います。
例えば、プレイヤーがマップの変化を認識し、新しいルートを考える際には、中央後部回や楔状回が関与し、空間認識能力を強化します。
また、楔状皮質は、長期的なゲームプレイにおいて、過去の視覚情報を記憶し、次の選択に活用する機能を持っています。
これにより、プレイヤーは視覚的な手がかりを活用しながら、より効果的な戦略を立てることができます。
前頭葉(特に前頭前皮質)
前頭前皮質(OFC)は、意思決定や問題解決、計画的な行動の調整に関与する脳領域です。
レガシーゲームでは、プレイヤーが長期的な影響を考慮しながら選択を行う必要があり、これが前頭前皮質の活性化を促します。
前頭前皮質は、短期的な報酬と長期的なリスクを天秤にかける際に特に重要な役割を果たします。
例えば、『パンデミック・レガシー』のようなゲームでは、プレイヤーがどの都市を優先的に救うかを決定する際、長期的な戦略を考慮しなければなりません。
この過程で、前頭前皮質が活性化し、計画的な意思決定が強化されます。
また、感情のコントロールにも関与し、ゲーム内で困難な決断を下す際のストレスを軽減する役割も果たします。
前帯状皮質(ACC)と側頭葉
前帯状皮質(ACC)は、プレイヤーが認知的負荷の高い選択を迫られた際に活性化する脳領域です。
また、側頭葉は、過去の経験をもとに意思決定を行う際に重要な役割を果たします。
ACCは、プレイヤーがゲーム内で複数の選択肢を検討し、その結果を予測する際に活性化します。
特に、プレイヤーが選択の矛盾や葛藤を感じたとき、ACCが強く働きます。
一方、側頭葉は、ゲーム内のストーリーや過去のプレイの記憶を統合し、それをもとに次の選択を導き出す機能を持っています。
この組み合わせにより、プレイヤーはゲームを通じて過去の経験を学習し、より良い選択をする能力を向上させることができます。
基底核と黒質
基底核と黒質は、報酬系に関与する脳領域であり、プレイヤーがゲーム内で目標を達成するたびに活性化します。
レガシーゲームでは、長期的な報酬を得るためにプレイヤーが計画的に行動する必要があり、この過程で基底核が活発に働きます。
基底核は、プレイヤーがゲームの成功体験を通じて報酬を得た際にドーパミンを放出し、モチベーションを維持する役割を担います。
例えば、プレイヤーが難しい選択を乗り越え、ストーリーが大きく変化する場面では、この領域が強く活性化します。
これは、プレイヤーがゲームに没入し、次の選択へと意欲を高める要因となります。
小脳
小脳は、運動調整や学習に関与し、プレイヤーがゲームを繰り返しプレイすることで行動パターンを習慣化するのに役立ちます。
プレイヤーが戦略を最適化し、より効率的な行動を取るようになると、小脳が活性化します。
例えば、ターン制のゲームにおいて、プレイヤーが最も有利なアクションを直感的に選択できるようになると、小脳の学習プロセスが働いていることが示されます。
これにより、プレイヤーはゲームプレイを通じて認知的なスキルを強化し、より洗練された判断を行えるようになります。


リハビリへの応用
レガシーゲームのメカニクスは、プレイヤーの選択が長期的な影響を与える仕組みを持ち、リハビリテーションにおいても応用できる可能性があります。
特に、モチベーションの向上や適応性、長期的な目標設定、社会的スキルの強化などに貢献し、患者のリハビリテーションをより効果的で持続的なものにすることができます。
以下に、具体的な活用方法として…
- モチベーションの向上とエンゲージメント
- 適応性とプログレッション
- 長期的な目標設定と達成感
- 社会的スキルとコミュニケーション
…について解説します。
モチベーションの向上とエンゲージメント
リハビリテーションでは、患者が継続的に取り組むことが重要ですが、単調な訓練や繰り返しの運動ではモチベーションが低下しがちです。
レガシーゲームのメカニクスを取り入れることで、患者が自分の選択によってリハビリの進捗が変化することを実感し、より積極的にリハビリに取り組むようになります。
ゲーム要素を導入したリハビリテーションでは、患者の行動が次のセッションに影響を与える仕組みを作ることで、達成感を得られるようにします。
例えば、バーチャルリハビリテーションプログラムでは、患者が一定の運動目標を達成することで、ゲーム内のキャラクターが成長したり、新しい機能が解放されたりする仕組みを導入できます。
これにより、リハビリを単なる治療ではなく、ゲームの一環として楽しむことができ、長期的なモチベーションの維持につながります。
適応性とプログレッション
リハビリテーションは、患者の状態に応じて適切な負荷を調整することが重要です。
レガシーゲームでは、プレイヤーの選択やスキルに応じてゲームの難易度が変化するため、この適応性をリハビリにも応用できます。
ゲーム内での課題の難易度を、患者のリハビリ進捗に応じて変化させることで、過度な負荷を避けつつ、適切な挑戦を提供することが可能になります。
例えば、手の動作訓練を必要とする患者に対して、最初は単純な動作から始め、リハビリの進行に応じてより複雑な操作を要求するゲームシナリオを設計することで、無理なくスキルアップが可能になります。
こうしたシステムは、患者の状態に合わせた個別最適化を可能にし、リハビリテーションの効果を最大化します。
長期的な目標設定と達成感
リハビリテーションでは、短期的な成果よりも、長期的な進捗が重要です。
しかし、長期的な取り組みにはモチベーションの維持が課題となります。
レガシーゲームのメカニクスを活用することで、患者が段階的に目標を達成し、その過程を可視化することができます。
リハビリプログラムをレガシーゲームのように複数のステージに分け、患者が目標を達成するたびに次のステージへ進めるような仕組みを導入できます。
例えば、歩行訓練を行う患者に対し、1日目は10メートル歩く、1週間後には20メートルといった段階的な目標を設定し、それをゲーム内のマイルストーンとして記録することで、達成感を得やすくなります。
また、過去の成果が可視化されることで、「ここまで進歩した」という実感が湧き、モチベーションの維持にもつながります。
社会的スキルとコミュニケーション
リハビリテーションは、身体機能の回復だけでなく、社会的な交流やコミュニケーションスキルの向上にも貢献する必要があります。
レガシーゲームのメカニクスを利用することで、患者同士の交流を促進し、孤立を防ぐことができます。
マルチプレイヤー型のリハビリゲームを活用し、患者同士が協力して課題をクリアする仕組みを導入します。
例えば、二人一組で協力して物理的な課題を解決するゲームを取り入れることで、自然とコミュニケーションが生まれ、社会的なスキルの向上につながります。
また、オンラインリハビリプログラムを活用し、離れた場所にいる患者同士が仮想空間で交流しながらリハビリに取り組むことで、モチベーションの維持や心理的サポートにもつながります。


作業療法プログラムへの具体例
レガシーゲームのメカニクスは、プレイヤーの選択や行動がゲームに長期的な影響を与える仕組みを持っています。
この特性を作業療法プログラムに応用することで、患者のモチベーション維持、認知機能や身体機能の回復、社会的スキルの向上などに貢献できます。
以下に、対象者ごとの具体的な活用方法として…
- 高齢者の認知機能リハビリテーション
- 脳卒中患者の運動・認知機能回復
- 精神疾患を持つ患者の社会適応訓練
- 発達障害児のコミュニケーション・問題解決訓練
- 作業復帰を目指す就労支援プログラム
…について解説します。
高齢者の認知機能リハビリテーション
高齢者の認知機能低下の予防・改善には、長期的な記憶や計画力を維持することが重要です。
レガシーゲームのメカニクスを活用することで、日々の選択が次回のリハビリに影響を与える仕組みを作り、持続的な認知刺激を提供できます。
「ストーリー型回想法リハビリ」では、患者が過去の経験や出来事を回想し、それを基に物語を作成することで、エピソード記憶や想起の訓練が行われます。
セッションごとに新しい展開を加えることで、認知的な柔軟性を鍛え、次のセッションへの興味を引き出します。
また、「デジタルボードゲームを活用した認知訓練」では、クイズや問題解決型のゲームを使用し、記憶や判断力を向上させるとともに、前回の成果が次回の課題に影響する仕組みを取り入れます。
このようなゲームの要素を加えることで、単調になりがちな認知リハビリを楽しく続けることができ、患者のエンゲージメント向上につながります。
脳卒中患者の運動・認知機能回復
脳卒中後のリハビリでは、運動機能と認知機能の両面を鍛えることが求められます。
レガシーゲームのメカニクスを活用することで、前回の成果が次回の課題に影響を与える仕組みを作り、リハビリの継続を促すことが可能です。
「ステップアップ型の運動リハビリ」では、例えば手指や上肢のリハビリにおいて、ブロックを積む課題を行い、達成度に応じて次の難易度が変化するシステムを導入します。
成功すると新しい動作が追加され、患者の挑戦意欲を引き出します。
また、「目標達成型の認知トレーニング」では、道順を記憶しながらマップを作成するような課題を用い、前回の選択が次回のゲーム内容に影響を与える形で進行します。
このように、ゲーム的な要素を取り入れることで、患者の集中力を維持し、楽しみながら機能回復を促すことができます。
精神疾患を持つ患者の社会適応訓練
精神疾患を持つ患者にとって、社会適応スキルの向上は重要な課題です。
レガシーゲームのメカニクスを活用することで、少しずつ新しいタスクやルールを追加し、段階的にスキルを習得できる仕組みを作ることが可能です。
「日常生活スキル訓練ゲーム」では、食事の準備や買い物といった生活動作をゲーム内でシミュレーションし、達成した内容が次回のゲーム進行に影響を与えるように設計します。
例えば、初回は買い物リストの作成、次回はリストを基に食材を選ぶなど、段階的にスキルを向上させます。
「職業体験型ロールプレイ」では、仮想の職業環境を構築し、セッションごとに異なる業務を経験することで、職場復帰への準備を行います。
例えば、接客業を想定したシミュレーションでは、対人対応のトレーニングを行い、選択肢に応じて次の業務内容が変化することで、実践的な学習が可能となります。
発達障害児のコミュニケーション・問題解決訓練
発達障害児にとって、社会的なルールを学び、協力するスキルを身につけることは重要です。
レガシーゲームのメカニクスを活用することで、長期的なストーリーの中で社会的行動を学ぶ機会を提供できます。
「協力型ストーリーゲーム」では、グループで話し合いながらゲームを進め、各自の選択が次回のゲーム展開に影響を与えるようにします。
例えば、異なる選択肢を選ぶことでストーリーの進行が変わり、他のプレイヤーとの協力が必要になるため、コミュニケーションスキルが向上します。
また、「感情表現トレーニング」では、異なるキャラクターを操作し、特定の感情を表現する課題をクリアすることで、相手の気持ちを理解する力を育みます。
例えば、ゲーム内のキャラクターが困難な状況に置かれた際、プレイヤーが適切な感情表現を選ぶことで、ストーリーが異なる展開を迎えるように設計できます。
このように、発達障害児が楽しみながら社会的スキルを学べる環境を整えることができます。
仕事復帰を目指す就労支援プログラム
就労支援プログラムでは、業務遂行能力やチームワークの強化が求められます。
レガシーゲームの長期的な目標設定と成果の蓄積という特性を活用することで、実践的なスキル習得が可能になります。
「ステップアップ型の業務トレーニング」では、PC操作や接客業務などの基本スキルをゲーム化し、成功することで次のステージへと進む仕組みを導入します。
例えば、データ入力を練習し、一定の精度を達成すると次の段階ではより複雑な業務が与えられるようにすることで、業務スキルを段階的に向上させることができます。
「チームワーク重視の職場体験ゲーム」では、仮想の職場環境を作り、チームで課題を解決するシナリオを設定します。
例えば、複数人で店舗運営を模擬し、各プレイヤーが役割を担当することで、実際の職場でのコミュニケーションや協力の経験を積むことができます。
こうした形式のトレーニングを通じて、作業復帰への準備を進めることが可能となります。


参考
1)https://researchportal.tuni.fi/files/57095180/central_theories_of_play_and_games.pdf
2)https://press.etc.cmu.edu/file/download/1078/5897ba4c-533f-4fd7-b50b-15e7bfbe36f4